大和屋本店について-2
設計に当たって求められたコンセプトは、世阿弥の「風姿花伝」でした。
日本最古の道後温泉の歴史と文化と風情を感じながら、ホテルの自由さと旅館の寛ぎを融合させるものです。
寝食を分離するため、レストランや少人数の料亭、会食場、宴会場など、宿泊者以外の旅行者や地元の人にも選んでもらえる所を設けました。料理は和・洋・中華から選べます。これは全て専門のシェフ達が作ります。
温泉街でこゝだけ大きな樹木や緑があります。地階の大浴場や1階の喫茶処、バーや会議室そして2階の宴会場から眺められますし、道行く人々の目も楽しませる様設けました。
出入口は出来るだけ通りから後退させた平屋の玄関です。大型旅館にあるキャノピー(ガソリンスタンドの上屋など)は、バスを送迎するのに便利ですが、こちらはバスから降りた客1人1人に傘を渡します。そんな上屋の要求もありましたが、敢えて小間茶室のにじり口を思わせる小さな玄関にしました。団体客に合わせた施設ではない為です。
2、3階吹抜のコンベンションホールは500名収容の多目的ホールです。
4階の屋上に能舞台千寿殿があります。開店に先立って3日間に渡り、賀寿能が開催されました。舞台で芸が催される時はレストランや宴会場の窓が全て引込まれます。
5階から10階が客室です。エレベーターを降りた所にサービスステーションがあって、こゝから茶やコーヒーのサービスがあります。
高所恐怖症の私は10階から真下などとても見られません。能舞台がある辺りは良いのですが、地下の女子大浴場の上部は設計していても大腿部がサワサワする具合です。それで客室階には窓拭き用に手摺の無いベランダを1メートル程出しました。これで真下が見えなくなり、階下の人の話し声も聞こえません。窓外に手摺を設けて、万が一の時はこれを伝って避難も出来ると思いました。落成式に出席した折、よりによって10階の右端の特別室を当てゝくれました。この室は窓掃除用ベランダではなく、広い寛ぎ用ベランダが付いています。もちろんそこには近寄るべくもありません。屋上屋根の勾配を利用して物置を作りました。工事用の施工図等もこゝに保管してあります。一度左側の非常階段で昇りましたが、降りる段になって足が竦みました。何せ前方建物の地面が見えたからです。




